2015-11-14 第三十夜 前身 天気が優れない日が続いている。雨の日は人が外にあまりいないので僕は好きだ。人のたてる音が雨音で相殺されるし、視界も灰色がかる。つまり、他人の存在が希薄になるのだ。 そして、曖昧でぼやけた世界で独りぼっちの僕は淀んだ空を見上げている。その顎先からは水がしたたり落ちるけれど、それが涙なのか雨なのか僕自身ですらわからない。