数奇草

四畳半に魅せられた理系学生の備忘録

第二十七夜

 

 僕は明日の代数学の中間試験を受けないことを決意した。

 僕は数学専攻をしようと考えている人間ではない。それなのになぜ代数学の講義を受けているのかというと、単なる「興味」である。面白そうと思ったから受けてみただけの話なのである。

 それじゃあ単位なんていらないんなら中間を受ける必要はないんじゃないか。確かにそれはそうだ。しかしここでまた別の問題が浮上してくる。僕は常人離れした試験恐怖症なのだ。スイッチが入ってしまうと激しい動悸に襲われて呼吸さえままならなくなるほどだ。よく今の大学には入れたねと他人に言われるくらいの深刻さだ。

 つまり、僕は中間試験が怖い。だから逃げた、と思われるのではないかという危惧が払拭できないのだ。他人からそう思われるのが苦痛なのではない。自分自身にこいつは逃げたぞ!と思われるのが嫌なのだ。そのためにはどうしたらいいのだろうかと今日はバイトの片手間に考えていた。(まじめに働けという言葉はいらない)

 

 よく思春期の頃は悩むと聞くが、さすがに20代にもなって思春期はないだろう!僕は10代の頃より今の方がずっと悩んでいる。あの頃も悩んではいたが、それを1としたら今は5000は悩んでいる。悩むだけで賢くなれたらどんなに楽なことだろうか。