数奇草

四畳半に魅せられた理系学生の備忘録

第二十六夜

 

 僕は文字を書くのが好きだ。大学の講義でのノートもいかに美しく仕上げられるかという縛りを自分に課しているくらいだ。

 文字を見るだけでその日の気分がよくわかる。頭が回らなくてむしゃくしゃしてる日は止めや跳ねが乱雑になっているし、やる気に満ちている日は文字が綺麗に羅列されていて何度見返してもうっとりするクオリティになる。

 僕は元々自分の文字にコンプレックスがあった。中学までの自分のノートはまるで小学校低学年のひらがなを習いたての子供が書いたようで目も当てられないものである。先ほど文字はその日の気分を表すと書いたが、文字はその人の性格も表すことができるのかもしれない。卑屈な人間には卑屈な文字が大胆な人間には大胆な文字が書けるということだ。あの頃の僕は字を書くというコンプレックスが巡り巡って文字を汚くすると言う負のループに陥っていたのかもしれない。

 今の僕の文字はどうだろうか。他の人からは「綺麗」「几帳面」「文字が小さくてびっしり」などと言われる。文字を書くのが好きになったくらいなのだから僕の書く文字が綺麗なのは当たり前なので、ここでは「几帳面」という印象が僕の性格を表すのにぴったりなのだろう。(ここで自分の部屋を見渡して本当に僕は几帳面なのだろうかと首をかしげた)

 

 文字を書くのが好きという関係で僕は小説を書くのも好きだ。しかし、さすがに手書きで書くには紙も労力も半端ではなくなるので、(泣く泣く)ぱそこんで書いている。今の僕の小説はまだまだ他人の目を気にしているという心象を受ける。本当に自分の書きたい物ができあがったときはどこかの賞にでも投稿しようかと考えている。