数奇草

四畳半に魅せられた理系学生の備忘録

第二十五夜


  簡単に要約できるような日々はとても不毛だ。大学に通うか家にいるかバイトをしているほぼ僕の日々はこの三要素で構築されている。幼少の頃から家の近くには年の近い子供がおらず、高校の頃も学校のある市内まで直線距離で30kmほど離れたところに住んでいたので外で何かをして遊ぶということをしなかった。1人でも外遊びは成り立つのだが、あいにく家の周りには娯楽施設は皆無であり、それに僕は部屋で本を読んでいることのほうが好きだったのでずっと家の中にいた。

  

  だからこそ僕は外で遊ぶという行為の前に外に出るという行為が苦手なのだ。外に出てしまえばそこらをぶらぶら歩いてもいいし本屋に行って面白そうな本を探すのもいい。それがわかっているのに余程のことがない限り僕は部屋の中から出ようとしない。いわば、自分の部屋が自分のための要塞のようなものになってしまっているのだ。


  実家にいた頃はいくら家の中にいても気が滅入ることはなかったのに一人暮らしを始めてみると、部屋の中で一人ということはとても精神的に苦痛なものになってしまった。

  この苦痛を自分の糧としてもっとオープンな性格にでもなればいいのかもしれないが、それは容易なことではないのは自明だ。元々僕はそこまで閉じた性格ではないと思っているのだが、とはいってもそう思っているだけで他人の目から見れば僕は陰気な引きこもりなのだろう。


  僕は大学に入るときにネガティヴな思考は非生産的だからやめようと誓った。大学に入る前にも〜はやめよう。みたいに様々な決心をして実行をしてきた。精神的に向上心のないものはバカだが僕の座右の銘だ。


  しかし、変化に耐えられない自分が徐々に心の中に台頭してくるのを感じる。これは僕も年をとって固定的な観念に身を投じるほうが楽なことを知ってしまっているからだろう。      僕はそんな甘えた自分に鞭打ってこれからも向上心を大事にしていきたい。