数奇草

四畳半に魅せられた理系学生の備忘録

第十夜

 

 今日は知人のO氏と映画を観に行った。映画を観に行くなんて中学生の頃以来のことなので内心僕はかなりワクワクしていた。


 映画のタイトルは「心が叫びたがってるんだ。」略してここさけだ。

 主人公の女の子とそれを見守る少年に焦点が当てられていて、その二人を見ているとまるであたかも自分自身の目を背けていたことを見ているような気がしてならなかった。


 確かに言いたいことが言えずにいるというのは万人に共通することであるとは思う。しかし、それを気に病んでいる人は歳を取るにつれて減っているのではないだろうか。万人に共通するからこそ当たり前になっていっていないだろうか。

 そういう点で若者を描く作品というのは古今東西、歳を重ねて萎びた我々の心に清涼剤のような効果を発揮してくれる。


 若いことを無知の象徴として蔑む人がいるらしいが、無知だからこそ知りたいと思い、もがき苦しみ、時には挫折を味わい、時には成功を味わいながら四苦八苦する様は僕は美しいと思う。流した汗は裏切らないなんて臭いセリフを吐くのは嫌いだけど、僕はその汗を流した人をきちんと労わって認めてあげられるような人間になりたい。